私が漫才協会に入った頃、淳師匠はコンビでネタをやっていらっしゃいました。
その当時もやはりコント。
会場を所狭しと走り回る様子を観て、お客さんは大爆笑!
淳師匠の立ち振る舞いのそれは、曲がりなりにも同じく芸事を生業とする私から見ても…それが台本が用意された、想定のやりとりなのか、はたまた全てアドリブなのかも判別が出来ない程に血肉の通った、活き活きとしたものでした♪
それまで生で観るコントと言えば、練り込まれた台本があって…思惑通りに進めて行くものしか観たことがなかった私にとって、それが振り返ると…〔子供の時に観てた“ドリフ”と同じや!〕と胸躍ったことを覚えています。
そして驚きだったのは…出番が終わり、楽屋に戻られた淳師匠が相方さんである笹八平師匠にダメ出しをしていたのである(八平師匠申し訳ありません。。。)。
勿論、受けたらダメ出しは必要ないということではなく、むしろ受けて〔ヨシッ!今日は完璧だ!〕とか思っている人に未来はないと思いますが…淳師匠のそれは、まるでむしろ滑ったかのような厳しさで。
正直最初は…〔何もそこまで〕と思ったのですが…よくよく聞いていると(だって聞こえて来るんだもん)その内容の全てが腹落ちするというか、的を射ていて。
八平師匠もさっきまでの舞台上の活き活きとした感じはどこ吹く風、しゅんとされていたのが、これまたちょっと滑稽だったり(八平師匠、本当に申し訳ありません)。
師匠方の中には、何かとアドバイスしたがる方が居るかと思えば、全く何も仰らない方も居ます。
こいる師匠なんかは礼儀・作法に関しては気になったら直ぐに指摘して下さる方なんですが、こと芸事に関しては、実は一度もダメ出しやアドバイスをされたことはありませんでした。
これって生前のこいる師匠のイメージからすると、ちょっと意外に思われるかもしれませんが…これは一歩踏み込んだお付き合いをさせて頂けたからこそ知り得たことなんだと思います。
そして淳師匠はというと…実は若手と呼ばれる当時の我々のような者に対して、滅多にダメ出しをするようなことはありませんでした。
何だったら…一度、“W一門”のとある師匠と酒席を共にさせて頂いた際、その方が私にロックオン。
それはまぁ、中々ないレベルの集中砲火で凄まじいダメ出しをされたことがありました。
あっ、これは漫才協会の名誉のために言っておきますが…その方は漫才協会の方ではなかったということ。
そして、漫才協会の師匠方で、そこまでダメ出しをして来るような方は居ない、ということだけは…お伝えさせて下さい。
そして…ここは私も生意気なところがあって、もしかしたら良くない態度を取ってしまっていたかもしれませんが…それはまぁ、私的には全く飲み込めない、見当違いなダメ出しで、それでも若い頃のように反抗的な態度を取るようなことはなかった筈。
その時は〔参ったなぁ〕なんて思いながら、〔どうやったら落ち着く方向に持って行けるかなぁ〕なんてことを考えながら、ひたすら「はい」「はい」を繰り返していたのは、今となっては良い思い出です。
その席にも実は、淳師匠が同席されていました。
2023年10月01日