音響効果の住吉昇です。
前回は「音の三要素」を勉強しました。今回はデジタルの基本、
「サンプリング周波数とビット深度」を探っていこうと思います。
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サンプリング周波数とビット深度
サンプリング周波数とは
音声や環境音など耳に届いているほとんどの音はアナログ音です。そのアナログ音をデジタル処理してデジタルデータにするための処理を標本化(サンプリング)といいます。標本化するためには周波数成分の2倍より高い周波数で標本化する必要があるといいます。人の可聴域は一般的に20Hz〜20KHzですので、その2倍の40KHz以上あれば良いことになります。
そのことから、CDは44.1KHzになり、テレビやDVD、Blue-rayなどは48KHzのサンプリング周波数になりました。
※専門的にさらに詳しいことは、ご自分で調べてください。
アナログ信号をデジタル信号へと分割して音を処理していますが、その時一つ一つの分割データを「サンプルリング」と呼び、1秒間に何回分割が行われたかということを「サンプリング周波数」と呼んでいます。サンプリング周波数はヘルツ(単位:Hz)で表記します。1秒に1回分割すると1Hzです。100回分割すれば100Hzになります。
分かりにくいと思うので、パラパラアニメを想像してください。一見スムーズに動いている動画は一枚一枚描かれた静止画のページをめくることで動画となっています。どうですか、理解できましたか。サンプリング周波数もデジタル変換して、一枚一枚止めた音の集まりなのです。
例えばCDのサンプリング周波数は、44.1KHz=44100Hzですが、1秒間に44100回分割しているという事になります。
サンプリングのイメージ図
人の可聴域
アナログ信号をデジタル信号として記録し再現するためには周波数の倍の周波数でサンプリングする必要がると言われています。CDはサンプリング周波数が44.1KHzなので、再生可能な周波数は22.05KHzまで理論上再生ができることになります。人が聴くことができる周波数は一般的に20Hz〜20,000Hz(20KHz)と言われています。年齢やその時の体調によって個人差があってその都度変わると言われていますが、このサンプリング周波数でも十分に可聴周波数域をカバーしています。
最近はより良い音を求めて、サンプリング周波数を高い周波数に設定してCDに入りきれなかった情報量(3倍〜6.5倍)を再生する「ハイレゾ(High Resolution)」と言われる「高精細・高解像度」のオーディオ・ファイルがあります。
そのためではないのですが、
プロ用機器では44.1KHz、48KHz、88.2KHz、96KHz、176.4KHz、192KHzと扱える周波数が多くなっています。より高い周波数の音までも忠実に録音・再生しよということです。さらに上の周波数に達しています。
音色をより良くする工夫がなされているのですが、余談ですが元音が悪いと忠実にその音の悪さを再現してします。ご注意を…。
このサンプリング周波数のイメージ図は、同一波長の音をサンプリングする時のサンプリング周波数の違いを表した図です。
横軸が時間を示し、縦軸は大きさ(音量)を表しています。
サンプリングのイメージ図を見てわかるとおり、実際のオリジナルの波形に比べて棒グラフのようになっているのがわかりますね。カクンカクンした波形になっていますよね。オリジナルの波形にあくまでも似せているということなのです。当たり前ですが、サンプリング周波数の数値が大きくなる程、元の音(アナログ波形)に近いデータになります。
サンプリング周波数のイメージ図
先程パラパラアニメの例をあげましたが、作画数(ページ数)が少ない場合パラパラしてもコマ送りのようになってカクカクした動きになり、動きが悪い映像になってしまっています。スムーズに動かすには作画数を多くすることでよりリアルな動きになりますよね。
【サンプリング周波数の数値が大きくなる=元データに近づく】
サンプリング周波数が高くなると元音の再現性が良くなり、元音に近づいた音質になるのですね。
ビット深度とは
続いて、ビット深度についてです。
「ビット深度」とは、数値を高くすれば「音質」がよくなる魔法の数値です。音量やキメ細かさを決める数値で、数値単位は「bit(ビット)」と表します。
こまかく見ていきましょう。
同一サンプリング周波数で、一番小さな音量と大きな音量を何段階で表すかを決める数値のことです。ビット深度が高いほど高音質でリアルな音色を感じることができるのです。
イメージ図は横軸が時間を示し、縦軸は大きさ(音量)を表しています。
右側と左側を比べると、左側の音量が細く分割されていますよね。細く分割することで音質の表現力は増していきます。
ビット深度のイメージ図
先程パラパラアニメで例えましたが、ビット深度とは一枚の作画の細かさになります、
ビット深度が高い数値になったときは、作画がより細部まで描かれたということになり、音量の大きさやリバーブなどのエフェクトその他の表現力が高音質に感じると思います。
CDは16bitです。16段階ではないですよ。
Bitは2の乗数なので、2の16乗で65,536段階になるのです。
音を作成する場合、16ビットや24ビットが使われます。多くの場合24ビットで作成して16ビットに変換するということをやっています。
24ビットを計算すると、2の24乗で16,777,216段階になりました。
16ビットと24ビットでは256倍の違いがあるということが分かります。
どうですか。24ビットで作成し16ビットに変換するというやり方は、音質劣化を極力さけたいという思いから生まれた方法なのです。
16bitか24bitを選んでおけば基本的には問題はないでしょう。ちなみにファミコン(ファミリーコンピュータ)のピコピコ音ってありますよね。高橋名人が活躍した80年代後半から90年代前半のファミコンは8bitで動いていました。その当時のピコピコ音やチップチェーン(音楽ジャンルの一つ)などを「8ビット」っていう言い方していましたね。
何でもかんでも高いサンプリング周波数にして高いビット深度で録音すれば良いというものではないんですよ。保存と音質の問題があるんです。
まず保存の問題です。ファイルサイズが大きくなりすぎて扱いにくくなってしまうという事があります。192KHz/24bitという良い音質で録って置いて作業の時に扱いやすいサンプリング周波数やビット深度に変換するのなら良いのですが、録ったままの192HKz/24bitで作業をするということになると、全ての素材のサンプリング周波数とビット深度をあわせなければなりません。作成には膨大な素材を使うことになるので、パソコンの高いスペックやハードディスクの空き容量も十分に必要になります。
続いて音質の問題です。192KHz/24bitで音楽を作ろうと録音を始めました。使っているデジタル楽器は、192KHzに対応しているのでしょうか。マイクを使う場合のプリアンプや、デジタル・シンセサイザーやエッフェクターなどはその個々の持っているスペック以上の音質にはならないのです。
CDを例にすると、44.1KHz/16bitを192KHz/24bitで録音しても44.1KHz/16bit以上の音質にはならないということです。すでにデジタル化されているものは、それ以上のデータは増やせないということなのです。
今ではいろいろな作業を個人個人の分業で行い、最後に出来上がったものを持ち寄って一つのファイルにして、続きの作業を進めるといった制作をすることがあります。全員(この場合持ち寄る人数)のサンプリング周波数とビット深度を合わせておかないと一つのファイルにすることができなくなってしまいます。
程ほどのサンプリング周波数とビット深度で作業することでデータが扱いやすくなるのです。何事も程ほどです。
ビットレートとは
ちなみに「ビットレート」とは何でしょう。
ビット深度とは違います。
ビットレートは「映像」「音声」それぞれ別々に割り当てられています。
ビットレートが高くなると「映像」は高画質になり「音声」は高音質になります。
ここでは「音声」のビットレートの数式を見ていきましょう。
サンプリング周波数(Hz) X ビット深度(bit) = ビットレート(bps)
で表すことができます。
単位はbps(bits per seconds)の略で、1秒当たりのデータ量を表しています。
例えばCDの場合
サンプリング周波数:44.1KHz
ビット深度:16bit
チャンネル:ステレオ
44100(Hz) X 16(bit) X 2(ステレオ) =1,411,200(bps) ≒ 1,411(Kpbs)
となります。
「サンプリング周波数」「ビット深度」のどちらも上げることで「ビットレート」が上がり、音質が良くなります。
・サンプリング周波数を上げると、より滑らかな音になります。
・ビット深度を上げると、音の表現力がよくなり、細やかさが増していきます。
まとめ
様々なサンプリング周波数とビット深度で作業をしていますが、みんなで持ち寄る時にサンプリング周波数とビット深度があっていないと作業が進まないことになってしまいます。
みんなで作業する時には、扱いやすいサンプリング周波数とビット深度を事前に選んでみんなで共有すると良いでしょう。
程ほどが一番です。
最後までお付き合いくださいまして有難う御座います。
本日はここまでとさせて頂きます。
次回も乞うご期待!
一緒に「今日も元気」にそして「あしたの元気」に繋げましょう!
音響効果・住吉昇