「木曽ちゃんはさ、挨拶ちゃんとしてるのにさ…」
…ここまで笑顔だったひでや師匠の表情が曇りました。
「打ち上げに参加してた男の子、居たじゃん」
「はい」
「木曽ちゃん帽子とって挨拶してるのに、相手は帽子被ったままでさ」
…確かに、そこに居た若い子は正直、あまり愛想が良くありませんでした。
「あれは駄目だよねぇ!木曽ちゃんはエラいよ!」
とても有難いお言葉を頂いた一方で…色んな思いが過ぎりました。
お褒め頂いたことはとても有難いけど、それってこちらは当たり前のことをしているだけ。
ただ、私自身そんな偉そうなことを言えるような立場ではなく、私も若い時は恐らくその若者のような態度で接することもあったと思います。
だから…その若者もいつかそのことに気づくことがあるかもしれないし、あればイーなぁ、と思います。
そして…穏やかで優しいひでや師匠について。
亡くなられる時まで、私はひでや師匠に怒られたことが一度もありませんでした。
だからって…“優しい人=甘い人”ではないということ、これは決して誤解してはならないと思う。
噂では“漫才協会でキレたら一番怖いのはひでや師匠”という話も耳にしたこともあります。
だから“優しい人”をナメて掛かるなんてあるまじき行為。
この出来事で学んだこと、それはまさに“優しい人=甘い人”ではない、ということ。
優しい人はちゃんと見てるのです。
そして人を見極めてらっしゃる。
そしてギリギリまで我慢されてるのです。
そういえばこんなこともありました。
ひでや師匠は晩年、ご自身が付けられていた“ズラ”をネタにされていました。
そのことがキッカケでメディアに出演することもあったり。
最終的には前向きに取り組まれていましたが…実はそうなる前、イベントでご一緒した後の打ち上げでその辺りのイジりを本意に思っていらっしゃらず、本当に悩んでいらっしゃったのを見たことがあります。
怒れば良いのに…我慢されてたんですよねぇ。
結果的にはテレビにもご出演されたりすることにもなり、良かったのかもしれないけど…。
私自身はその光景を目にしていたので、とても複雑な気持ちになったことを今でも覚えています。。。
2023年12月5日