完全にお笑い芸人としての道を諦めていた、当時の私。
何故そう言い切れるのか？
ちょうどその頃、私にとって比較的近い存在だった芸人が、注目を集めつつある頃でした。
ダンディ坂野さん、はなわくん、アンガールズ…何気なく点けたテレビで活躍する、かつてのライブ仲間たち。
そんな仲間たちを観て、心の底から素直に〔良かったなぁ〕〔頑張って欲しいなぁ〕〔このまま順調に行けたらエーな〕…この気持ち、もはや完全にライバル視していたかつての私とは違う感情になっていました。
もはや勝った、負けたの感情は存在しなかったのです。
素直にエールを送るような感情が湧いて出た自分を客観的に見て〔これはもはやお笑い芸人としては現役ではないな〕そう思いました。
その一方で〔これから何を目標に生きて行けば良いのか？〕そんな自問自答の繰り返しの日々でもありました。
それ位、人生の目標の全てをお笑い芸人に賭していました。
しかしながら、その人生がくるりとまた踵を返し、元来た道に戻る出来事がありました。
それが…のちにWコロン結成へと繋がる、根津君からのコンビの誘いでした。
その辺りの経緯は随分前にWコロンで出した本で書かせて頂いたので割愛させて頂きますが…その誘い文句の中でひと際異彩を放っていた二つのキーワード。
それが…“浅草”と“漫才協会”でした。
今考えても本当に不思議なんですが、自分でも不思議なくらいお笑い芸人としてのモチベーションを失っていた私が、結果お笑い芸人としての茨の道に戻ってしまいました。
その決断に至った理由は様々あって、勿論お笑い芸人になった人が多かれ少なかれハマッてしまう“中毒性”に因るところも大きいと思う。
具体的に言うと…自分でネタを考えるでしょ、そしてその考えたネタを自分自身で披露して、その日観に来てくれたお客さんが笑う。
その笑いが大きければ大きい程、お笑いの常習性にハマってしまうのです。
お笑い芸人にとって最も精度の高い自己承認欲求の解消なんです。
私自身台本も書く人間ですから…その要素は多分に否定出来ません。
そしてそれは純粋に“お笑いが好き”ということとイコールになる訳で、結局その“お笑いがが好き”が骨の髄まで染み込んでしまっていたんでしょうねぇ。
勿論、根津君の（当時からその原形として披露していた）古典芸に対する可能性も感じましたし、直ぐには形に出来ませんでしたが試してみたいアイデアも浮かびました。
そして何より期待と不安が入り混じった大きな好奇心となったのが…“浅草”と“漫才協会”。
“浅草”と“漫才協会”は…私が一度は諦めたお笑いへの道へと舞い戻る、その大きな理由となったのでした。
２０２３年０７月０６日
