その昔“飲みニケーション”という言葉があって、大体の意味はご理解頂けると思うのですが…すなわち“居酒屋などで飲みながらコミュニケーションをとる方法”のことなんですが、少しずつ廃れつつあるように思うこの文化は…この時のこいる師匠とのさし飲みにおいて、確実に功を奏したと思っています。
こいる師匠ご自身は何の意識もなく私を誘って下さったんだと思います。
それは…嘘をつく方じゃないので信じてよいと思っています。
ただ一方の私は…漫才協会に入り立ての頃の出来事を抱え、その後のラジオでの件での反省の念が重なり、その前に大前提として“大先輩とのさし飲み”という緊張感まで伴っているのです。
今振り返っても…結構緊張したのを覚えています。
そして行かせて頂けたことで色んなことが変わりました。
こいる師匠はお酒が好きな方で、まずは“飲みに行ける間柄”という共通項は…確実にこいる師匠との距離感を縮めることが出来ました。
お酒を飲むと気が大きくなって、急に強気に出たり、人に絡んで行ったりする人が私は本当に嫌いなんですが…そうではなく“重い空気を解きほぐす”といった使い方が出来れば、お酒はとても有効な使い道があると思っています。
こいる師匠は…じっくり話を噛み締めながらゆっくり静かに飲まれる方でした。
後輩である私はその点に関して最大限配慮する必要があり、そのひと時をご用意することで、こいる師匠は快適な時間を過ごすことが出来る。
2人で飲めたことは、そんなこいる師匠の芯の部分を覗くことが出来て、本当に良かったと思っています。
そしてその肝心の話。
昭和のいる・こいる師匠の師匠にあたる、獅子てんや・瀬戸わんや師匠の話、若手時代の話、フジテレビの元旦の演芸番組『爆笑ヒットパレード』に出演してブレークした時の話…その全てが興味深く、自分と比較しながら…その話全てが実に貴重でした。
『爆笑ヒットパレード』に出演されたのが1999年。
年齢で言ったら55になる歳、芸歴で言えば33年目…そこまでも勿論ご活躍はされていた訳ですが、この世界、やはり自分の名がどこまで知られているかで活躍の幅が随分変わって来る訳で、そういう意味で言えば…遅咲きだと言っても良いんじゃないかと思うのです。
このような話を知ってお付き合いするのと、知らずにお付き合いするのとでは大きな違いがあって…この日の夜のひと時は、私にとって、その後こいる師匠とお付き合いをさせて頂く大きな礎となったのでした。
2023年08月02日